ゴーストオブアイデンティティー
『桐、これは貴女の身体能力が幸福より上、という事を指しています』

「私はあんな動き、出来ないわ」


『だから、ですよ。人間の肉体を100%、使うという事は、驚異的な身体能力を発揮する代償として、想像を絶する疲弊をもたらします。健康体の成人男性でさえ、10秒も経てば身体がバラバラに粉砕、自壊するでしょう。幸福の場合健康体どころか、筋肉組織、骨組織自体が脆く、栄養失調による器官不全を起こしています。何秒、もつと思いますか?』


ちらちらと幸福を見るが、興味を持たないらしく、また目をつむっていた。

「4秒…位じゃないの?」


『甘いですね。0.2秒です。しかも行動後、1秒の心肺停止を余儀なくされます』

桐は病院での出来事を思いだした。

垂直跳びした幸福………………


あの時、長い間宙に浮いていたのは、心臓を休める為…………


座敷幸福の、弱点。

無防備の時間が、多すぎる事。

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