ゴーストオブアイデンティティー
私達はそれを当たり前だと思っていた。

当たり前だと、勘違いしていた。


その勘違いに、幸福は応えたのだ。
本当の自分を忘れて。




だから………

此所に今居る座敷幸福は、本物じゃない。



私達が望む幸福の姿を演じている、可哀想な、ヒトだ。


なら分かる。

幸福が、何故私が笑うのが分からないのか……


「幸福、今のあなたには分からないでしょうね。絶対に……。どうしてか、知りたい?」


「……………知るか」

「素直じゃないわね。知りたいって言っても言わないけど」


幸福は舌打ちした。

「あら、舌打ちしたって事は、知りたかったの?」


「……………」

虚を突かれた、というべきか。一瞬無表情になり、更に苦虫を噛み潰したしかめ面を、幸福はした。

どこか可笑しくて、桐は笑った。

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