ゴーストオブアイデンティティー
運命は、何故自分が此処に来たか、知らない。


身体が、勝手に動いたのだ。
見もしない、知りもしない、そんな土地に何故出向くのか。


箱に囚われていた存在が、知れる訳など無いのに……

身体の動くまま、赴くままに、運命は歩んだ。


途中、「鏡」に出逢った。
血塗れの鏡。四肢がもげ、血塗れの鏡に、二言三言、話し掛け、去った。

早く去りたかったのだ。
理由は解さない。

去った後声がしたが、振り向かず、去った。


「鏡」が死んだか否かは、判らない。

恐らく死んだろう。運命の何かが、そう告げた。


更に歩み続け、

そして此処に至った。

数多ある石の中、運命はこの、みすぼらしい存在の石に着いた。


これは、何なのだろうか。

墓というモノを、運命は知らない。


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