ゴーストオブアイデンティティー
単なる石に、何故こうも惹かれるのか…


「……あら?」

声がした。横を向くと、女が花を持って立っていた。

運命と違い、髪が短く、背が高い。小さめの眼鏡をかけた、いかにも頭脳明晰そうな、理知的な顔をしている。


「あなた大丈夫?怪我、してるの?」

中腰になり、視線を運命に合わした彼女は、心配そうに運命を見た。



「…オマエは、運命は死んでない」

一瞬呆けた顔をした彼女だったが、「そう」と笑顔になり、運命の頭を撫でた。


「偉いわね。一人でお墓参り?ご家族の方はいるの?」


「………エライ?エライって何?」


「えっ?えー…えっと…そうね…偉いって何、か…難しいわね、言われると………あ、こういう事かな」

彼女は閃いた様子で、再び運命の頭を撫でた。


「何かをして、頭を撫でられた時、その行為の事を偉いって言うの。分かる?」

いまいち微妙かな、と苦笑いし、彼女は運命の目の前にある石の前に花を置いた。

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