ゴーストオブアイデンティティー
手を合わせ、祈る。運命も見よう見まねで、手を合わす。

「…自己満足の大きさで、祈りってのは長さが変わるんだ。だから私はいつも怒られてた。なんでちゃんと拝まないんだ!、ってね。生憎、私は欲のない人種でね。自己満足も簡単に満ち足りるのさ。科学者の端くれな私としちゃ、こんな祈りなんていう非科学的な行為、好かないな。こいつも多分……」


「カガクシャ?」

「座敷機関は聞いたこと無い?そこの座敷闇風っていうヤツみたいな人間の事。実験オタク」


「…ザシキ、ヤミカゼ」

何だろう、懐かしい…何か。
ヤミカゼ…ヤミカゼ…闇風…

緋色で、背が高く、そしてどこかしら、

「オ…マエ?」

運命に、似ている。似ている?


脳が軋んだ。僅かに眉が歪む。
記憶が…抜けている………とは違う。


有る。有るが…しかし無い。
無いが…だが、確実に有る。


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