ゴーストオブアイデンティティー
「知らないの?ほらあれよ。火事で焼けたはずの町が一夜にして蘇った、あれよ」


「……知らない」

「そ?凄かったよ、あれは。感動した…どんな奇術師でも真似出来ない。奇跡の軌跡だね。私達が追い求める希望の花火だよ」

目を輝かせて語る女。何が凄い、驚嘆なのか。知れないが、女にとって重要なモノであるのは確かだ。



「だから、私は信じるよ。座敷幸福は生きている」

それが幾分か、運命の中を和らげた。幸福は生きている。確かな事なのだ。



「そうすれば、思えば、いつかまた、会えるかもしれないじゃない?この墓もそう。こんなもの無くしちゃって、この世界の何処かに儚が生きている。そう願いたいのよ」


「ハカナ?」

「座敷儚。私の、親友。いつかまた、会える事を信じて」


何だろう。脳が、揺れた。ガクガクと痺れ、目眩がする。


ハカナ……儚。

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