ゴーストオブアイデンティティー
「…オマエ」

「え?」

「オマエって…ずっと…言われて…た…」


少し混乱しながらも、桐は続けた。

「本当の名前は、何?」

「…本当の、名前?」

少女は考え、サダメと答えた。


「オマエの本当の名前は、サダメ。暗忌 運命(くらき さだめ)座敷じゃない」


そしてうつむき、呟く。
寂しそうに。

「……サチフクじゃ、ない」


「……サチフク?それって……座敷さちふ―――」


ぐらり、と桐は頭が反転したような気がした。

猛烈な吐き気が再度襲い、桐は池に走ろうとした。

が、


「死ぬよ?」

という運命の言葉にかろうじて足を止めた。「……え?」


「運命は構わないけど…一応言っておく。それ以上近付いたらキリ…死ぬ」
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