ｺﾞｰｽﾄｵﾌﾞｱｲﾃﾞﾝﾃｨﾃｨｰ

「座敷………儚？」

聞き覚えがない。座敷家に儚という人物はいただろうか？



『ご存知ないのですか？』

「…誰？座敷家っていったら、幸福、闇風、両刃、古傷……」


ここで桐は一人、重要な人物が欠けているのに気付く。





母親が、いない。


そう、母親が、いない。今まで幸福や闇風の印象が強すぎた為に意識しなかったが、その母親という重要人物が欠けている。


「幸福の……お母さん？」

『正確には幸福達の、です。座敷儚…正真正銘、彼等の母親ですね』



ムトに言われ、桐は何処か、違和感を覚えた。


幸福達の、母親。


そんな重要人物が何故に思い浮かばなかったか？

「そう……なの。その人は今は…何処に？もしかして火災の時に…いえ、それは無いわよね」