ゴーストオブアイデンティティー
そう、焼死は有り得ない。あの大火災は……嘘だった。偽物だったのだから。

「座敷儚は今、何処にいるの?」

『公式発表では焼死とされています。死因の信憑性については判りかねますが、座敷儚は既に死亡している、というのは確実です』


「そう…なんだ。やっぱり、幸福は座敷儚も憎んでたのかしら?両刃、闇風、古傷…家族、なのにね」



桐の表情は重く、暗い。
難解だ。憎しみとかいうやつは。どうも理解し難い。
今まで桐はそんな感情にかられた事は一度もなかった。桐だって両親と喧嘩はする。だが、それは互いの言い分が食い違うからであって、話し合えば何とでもなった。

そんな座敷家みたいな憎悪と殺意に淀んだ家など、想像を絶する。



話が噛み合わなくて…殺意が沸く。

お互いに言い分があり…殺意が沸く。

意見を押し付けたい衝動で…殺意が沸く。

すれ違い…殺意が沸く。


やがて


そこにいたから…殺意が沸く。

家にいるから…殺意が沸く。







座敷家だから…殺意が沸く。


・・・・・・・・・・・
家族…だから殺意が沸く

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