ゴーストオブアイデンティティー
「「遺産」…ね。あなたはそれが何か、知ってるの?」

『………………さあ?』

「さあ?って……曖昧ね。答えたくないの?」

『いえ、そうではなく、本当に曖昧なんです。遺産をインプットされた事自体は記憶にあるのですが、美少年がその後に私の中から作業行程の中身の記憶を削除したので。是非で答えるとしたら…「非」です』


美少年が残した「遺産」…一体何なのだろう。ムトにさえ見せたがらない特別なモノ。


「その遺産て、何かと関係するの?」


『遺産は美少年から幸福へのモノではありません。座敷儚から幸福へのモノです。彼女が殺される前日に作ったものだそうです』


「座敷儚から幸福へのモノ、か。母親から、子供への贈り物…」

私だったら何を渡すだろうと、桐はふと考える。子供はいないし、というより結婚すらしていないただの学生ではあるが。


まともな親ならば子の幸せを願って何かを渡すだろう。子は親を通して成長する。それは必然であり、また、そうでなければ必ずしもという訳ではないが、歪みが生じる。



――――――歪み

人との関わり方の歪み。
社会での暮らし方の歪み。
人としての生き方の………歪み



結局はこれらの歪みは一つの原因をもってして語られる。





「心」の、欠落。


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