ゴーストオブアイデンティティー
「ここを指定席にする幸福の気持ち、解る気がする」


『何故です?』

「だってここ……」


桐は目を閉じて膝に顔を埋めた。


「何だか、あたたかいもの。すごく落ち着く」

『…残念ながら私はそれを感じとる事が出来ません。精々熱感知システムで――』


「ううん、違うの。あたたかいのは、私の心。本当に、なんでだろうね?」


幸福への気持ちが少し、ほんの少しだけ変わったと、桐は思った。

ほんの少しの、気持ちの変化。気分の変化かも知れない。どっちでもいい。



私は幸福が……嫌いじゃない。

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