ゴーストオブアイデンティティー
苦笑。

どうしようもなく、苦笑。

嘲笑でなく、苦笑。


なんで私は彼女の親友となったのかへの、苦笑。

ならざるを得なかった。

結局のところ、それほどに彼女は魅力的だった。ただその一言に過ぎる。


桜が儚を受け入れてからというもの、何故か儚は桜の隣にいるようになっていた。

私みたいな奴と一緒にいて楽しいか―――

そんな質問を頭の中で繰返し問い、問い、問い、


儚の顔を見て考えるのを止めた。

考えてどうなるのだ、と。
考えた末、失ったらどうするのだ、と。





「今思えば……女々しかったな、私は。女だけどさ」



そして時間は加速した。高校の日々が駆け抜けるように過ぎていき、気が付けば卒業していた。

その時の事を桜はあまり覚えていない。


覚えているのは、儚が知らぬ間に留学を決めていて、「血の涙」を結成していた事、そして座敷家から縁談を受けていた事。

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