ゴーストオブアイデンティティー
別れ際に儚が言った言葉は、まだ覚えている。

「貴女は強い。だから弱い。貴女は自分が強いと思っている時はひたすら強いけれども、一度挫けてしまったら桜、貴女はきっと前には進めない。立ち止まってしまう。だから桜、強くなって。本当の意味で強くなって。そして私を捕まえて。私を止めて。私を助けて。……………ううん違うわ。私「達」を助けて」


それ以来、儚とは会うことはなかった。会う機会がなかった、とでも言うべきか。


知らぬ間に座敷家に嫁ぎ、幸福を産んだ。

そして…………



三年前に彼女は死んだ。

呆気なく。薄く。影無く。ひっそりと。

彼女は死んだ。


死因は知らない。真実は座敷家の闇の中に埋まったままだ。



あれ程光輝いていた存在。金剛石の輝きを抑えていても抑えきれない程輝いていた存在。

炭のように炭化して、

死んでしまった。


ひっそりと。桜は絶望した。



だって世界は………










・・・・・・・・・・・・・・こんなにも、変わらなかったの・・・
だから。


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