ゴーストオブアイデンティティー
桜は救わなかった訳ではなかった。
救えなかった、のだ。


座敷家に嫁いだと聞き、桜は座敷家の研究機関に研究員として配属された。

少しでも可能性があるなら、儚に会おう、と。


現実はやはり甘くなかったが。

座敷家直属の研究機関とはいっても、所詮は研究機関。儚が現れる訳など無いのだ。

何のエキスパートでもない彼女が研究等に関わるハズがないのは、良く考えずとも解る現実。


そこで12年後、座敷幸福に巡り会う奇跡が無ければ、桜は人生を単に棒に振っただけだったろう。

そして……

何もしない間に、儚は死んでいた。

      ・・・・・・・・
その後、桜は研究中の事故によ・・・・・・・・・・・・・・
り、数年間の記憶を失っていた。


そして三年前に起こった大火災による、座敷家の壊滅。

今に至る。

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