ゴーストオブアイデンティティー
煙草がフィルターギリギリまでまで燃え、消える。桜は携帯灰皿に吸殻を入れ、新しくキャメルに火を着けた。


「そう。所詮は結果…なんだよね、儚」

夜の闇が、深い。その中に埋もれてしまいたい。

懺悔する言葉も、悲哀する感情も、彼女を求める現状も、今は誰にも届かない。

煙草の白煙の如く、この闇に漂って、散って、吸い込まれる。

亡き者への言葉。
無き者への言葉。
泣き…私からの言葉。


世界中の大量の無が、どっと桜に押し寄せる。

虚無感。絶望視。無意味なこの体裁。自分自身への、誹謗中傷。


今にも…今にも潰れそうな私の体。世界を破滅させたい私の情動。


フィルターを噛み潰し。苛立たしさを紛らわす。


「……酒でも呑もうか」

確か戸棚にスコッチウイスキーがあったはずだ。コーヒーリキュールなどでなく、キツいアルコールが飲みたかった。


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