ゴーストオブアイデンティティー
「…お母さんは、暗忌儚は、何?オマエは、運命は何も知らない。運命が知ってるのは幸福だけ。だから知らない。でも桜はお母さんを知ってる」


澄んだ眼差しで運命は桜を見つめていた。その目は怖い程に純粋で、無垢だ。限り無く、果てしなく、何かを求めるその目。

「お母さんは―――何?」


桜はその言葉の持つ意味を咀嚼した。咀嚼、咀嚼、咀嚼…


そして意味へとやっと辿り着く。

運命は、知りたがっているのだ。儚がどの様な人物だったのかを。



「儚は…彼女は………」

どうすれば的確に彼女の事を言い表せられるだろうか。


頭がいい。綺麗。格好いい。凄い。親友。目標。希望。母親。大切。名前と違って儚くない。尊い。貴い。優しい。憂い。



色々と考えあぐね、桜は苦笑と共に答えを導きだした。





「………解らん」


「ワカラン?」

「ああ、結局彼女が何だったのか、解らない。正体不明、というのが、私の答えだよ」


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