ゴーストオブアイデンティティー
これが、幸福が身を削ってまで守る世界か。

何の価値が有るのだ?

自分達の立場も解らずわきまえず、そんな奴等の何処に、価値という言葉は有るのだ?



「…下らないわ、兄さん」



闇風は。
・・・ ・・・
くるり、くるり、と。


・・・・・
踊り始めた。


米軍艦の看板の時の様に闇風は踊り、ヘキサグラムを爪先で1ミクロの歪みも無く、正確に刻んでいく。



闇風が思考の末、思い立った事。それは……幸福を探すのではなく、幸福が闇風を探し、見付けるという事。


「御免なさい兄さん、私兄さんみたいに優秀じゃないの。劣等感の塊で粗悪品で、レプリカなの。だから…御免なさい兄さん。こうするしか私には出来ないわ。こうするしか…兄さんを殺す事は出来ないの」



最早騒音は闇風の耳には入らない。幸福の顔を思い出しては掻き消し、掻き消しては思い出しの繰り返し。

余計な事柄は考えず、ただ唯一、「殺」の言葉を全身にたゆたわせる。

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