ゴーストオブアイデンティティー
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大きな地鳴りと縦揺れが、桐が待機する幸福の隠れ家を襲った。
数分の間隔を置き、計10回の揺れ。
『桐、大丈夫ですか?』
「…これが大丈夫そうに見える?」
桐はげんなりした顔で布団の上で突っ伏していた。立っていたところを揺れに襲われ、倒れた場所が運良く布団の上だった。
「凄い気分が悪いわ。まるで乗り物酔いしたみたい」
『乗り物酔いで済んで良かったと思った方が良いですよ?部屋全体を覆うサスペンションが無ければ今頃私達は土の栄養になってましたから』
「ムト…あなた機械でしょう?」
『言葉のあやというものです、桐。ですが、そういった返しが考えられるという事は、心身共に大した怪我はしていないという事ですね。一先ず安心しました』