ゴーストオブアイデンティティー
幸福は計算が微妙にずれていた事を感じた。思いの外、こいつらが到着するのが早かった。


確実に限界が近付いてきている。痛烈だった。


「消えろ、さもなければここで殺す」

悟られるのを避けたかった幸福は、それだけ告げて女が逃げ去るのを確認すると、壁にもたれ掛かるようにして崩れ落ちた。


息が荒い。


心臓が壊れんばかりに心拍数が上がっている。

全身を引き裂くような痛みに、痙攣。


発作が幸福を襲った。

「…―…っ!!」


悶える程の苦痛を歯を食い縛って耐え、コートから小さな瓶を取りだし、中の、薬だろうか、カプセル型の粒を二、三粒噛み砕き、飲み込んだ。

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