ｺﾞｰｽﾄｵﾌﾞｱｲﾃﾞﾝﾃｨﾃｨｰ

そう……か。


頭に張り付いていた違和感が、消えた。


「ムト、解ったわ、私が言いたい事。此所は……違うのよ」


根本的な問題。ここに座敷家の姿は無い。

座敷家はいない。





「もう此所は…幸福の造り出した世界じゃないのよ」


幸福が築き上げた、完璧な世界。それは何処かへ消えてしまった。

何処かへ。行方の知らない世界へと向かってしまったのだ。

幸福の全てが是となる世界から、反れたのだ。


だから幸福の思い通りにならなかった。私が、闇風が邪魔をして、幸福の歩む道を変えたのだ。

一目見た限りでは絶対に判らない道。何時何処で現れて、間違えたかも判らない位、曖昧で、似通った道。


例えるならこれは………………





暗忌運命の、望んだ世界。