ゴーストオブアイデンティティー
「それは…私には多分一生かかっても判らないでしょうね」


桐はそう答えるしかない。

何かが変わった。それは感じられる。桐の様な表側の単なる一般人でさえ、踏み入る事が出来る世界へと変わったのが感じられる。

しかしそこまでだ。

そこまでしか、解らない。


「だって私は、あの二人じゃないもの」


私は世界の中心ではない。

座敷幸福でも暗忌運命でもない。単なる、中心を見ながら回っている傍観者に過ぎない。近付きたくても近付けない。ただ回っているだけで、本当は何が変わっているのかが解らない。


当然と思いながらも、桐は悔しくも思う。

世界の中心を目の前にして、理解する事は出来ても、何も出来ない。

手を伸ばす事は出来ても、触れる事は出来ない。


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