ゴーストオブアイデンティティー
「これが…私のアイデンティティーよ」


大火災の調査の時もそうだった。運命に逢った時も、幸福に逢った時も、闇風に遭った時もそうだった。

全てを見ずして、何を語る?
全てを知らずして、何を思う?
全てを得ずして、何を知る?



そう。知る事こそ、倉崎桐という人物のアイデンティティーの確立法。


ムトはもう何も言わなかった。


桐は立ち上がり、足の具合を確認する。痛みは無い。寝てばかりだったので相当身体は鈍っているが、まあ許容範囲だ。ただ包帯は外さなかった。万が一、という事もある。

「ムト、有り難う。かなりお世話になったわね」


天井に…ムトに向かって話し掛ける。しばらくして返事があった。

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