ゴーストオブアイデンティティー
間違いも答えとなる事を、ムトは知らない。


「あなたは本物の「あなた」じゃないかも知れないわ、ムト。でもだから何?私にとってはあなたはあなたしかいないのよ。其所にどうして、劣等感を感じるかしら?ムトはムト。本物は本物。それだけじゃない。コピーが何?コピーで、でもただそれだけなのに……」









『有り難うございます、桐』


中断。桐は天井を見上げた。

『桐の言葉には一理あります…いえ、それが正しいのかもしれません。ですが、私には私なりの答えがある。それは変わらないし、変えられません。やはり、私はAI、ムトですから。私はいいんです。私にその言葉はいらない。だから、彼等にその言葉を向けてあげて下さい』



彼等とは幸福の事か。

「幸福と…あと誰?彼等にって?」


『闇風、被検体No.84、そして……運命に』


知らない名も有ったが、それは後に知る事になるのだろう。

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