ゴーストオブアイデンティティー
内乱、若しくは内紛のニュースを思い出した。

荒れた町は、一瞬にして皆を狂わせる。温厚だった隣人が突然襲ってきたり、小金の為に殺人を行ったり…

それが20インチの画面の中でなく、目の前で起こっている、若しくは起こる可能性があるなら…


対応出来るだろうか。

否、無理だろう。


確かに。護身は必要不可欠かも知れない。


『ペンは剣より強し。ですが、人はペンより強し、ですよ』

「…分かったわよ、持っていくわ。但し、本当に使う意義がある時だけしか使わない」


ふと、止まる。

「私の服とか靴とかって…無いわよね」

病院の格好のままなのを忘れていた。


『…これで良ければ』

押入れが開く。本当に無駄に万能な押入れだと、桐は感心した。

出てきたのは見慣れた黒いコートと靴だった。桐よりサイズが大きい。明らかに男物のコート。これを着るとしたら一人しかいない。


『コートに関しては多少大きいかもしれませんが、そこは我慢して下さい。靴は、サイズが全く違いますからね。靴擦れを起こす前に町で適当に見繕う事をお勧めします』

「…いいの?幸福のモノでしょう?」

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