ゴーストオブアイデンティティー
最後に一言―――


別れの、言葉を。

「ムト」


『…なんでしょう?』


「私、幸福が嫌いよ」


『……そうですか』


「でも」


でも。
しかしだけどけれども。

どうしても。

「嫌いだけど、嫌いじゃない」


世界の中心とうたわれて。

畏怖されて。

でも、世界最弱で。

可哀想な少年が、どうしてか、嫌いになれない。


世界に利用され、食い物にされ、それを知りながらも私達の世界を保ち続けた少年が、

嫌いになれないのだ。
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