ゴーストオブアイデンティティー
クレーターの中心、波紋の中心に立つ人影。

その人影は何処までも緋色で、歪んでいた。


紅、一点。座敷闇風。

「煙草は身体に毒よ、幸福兄さん?」


距離は離れている。だが、闇風の声ははっきりと聞こえた。

「知ってる兄さん?煙草は一本吸うと5分位寿命が縮まるんですって。怖いわよねぇ、人間って。目先のほんのミクロ単位の快楽に溺れて、平気で肺を腐らせるんだから」

粘着質のある闇風の声に、幸福は顔をしかめた。

「…耳障りだ。喋るなクソガキ。てめえはこれが快楽に見えるか?だとしたら末期だな」

「フフ…御免なさい兄さん、この口調は癖だから辞められないの。私、病院でも行けば良いのかしら?それとも兄さんが診てくれるの?」


「……殺されたいか?あ?」

「あら、殺しに来たんじゃなかったの?残念。せっかく待ってたのに」


違和感。今までの闇風とは何処か違う。

あえて言うなれば………




・・・ ・・・
狂って…いない。

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