ゴーストオブアイデンティティー
「あなた………本当に何者なのかしらね?」


戸は何をやってもびくともしなかった。鉄の扉を開けようとするのと似ていた。


どうする事も出来ず、桐は運命の眠る横に座り込んだ。散る花びらのように乱れた長髪を踏まないよう気を付けながら。

運命の頭を撫でる。髪は絹を思わせる程に細く、繊細だった。

子供を見ているようだ、と、桐は思った。歳は不明だが、見た目は子供そのものである。桐の身長が160なのに対して、運命は頭一つ分低い。


眠る表情は、無垢な子供。



桐は畳の隅に置かれていたライカを点検し、異常が無いのを確認すると、

カシャリ―――

一枚だけ撮った。


ついでに、部屋の様子をカメラに収めていく。
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