ゴーストオブアイデンティティー
携帯が震え、ヤナセは繋げた。

「すみません、ヤナセ。G0の尾行に失敗しました。またロストです」


失敗、という単語に、体温が二、三度下がった気がした。

「怪我は?大丈夫なのか!?」


「私の心配より、G0の心配をしてください。ただのロスト。見失っただけです。戦闘は行っていません」


少し呆れた感じの声色に、ヤナセは幾ばくかの安堵を覚えた。

そうだ。私が慌ててどうする。私しかいないのだ。

「…すまない」


「ヤナセは気を張りすぎなんです。だらけるとは少し言い過ぎかもしれませんが、もっと弛くて大丈夫ですよ」


弛く…か。確かに必要だろう。


「あんまり気を張りすぎていると、私がヤナセに近付けないじゃないですか」


思考が、止まる。

「それは…」


どう、受けとめるべき言葉なのだろうか。

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