ゴーストオブアイデンティティー
痛みは、もう無かった。胃が痙攣する程の激しい吐き気を催すが、それは薬の副作用だ。そう珍しい事ではない。


それ以前に、二日間程絶食していたので吐くものは何も無いが。


幸福は痙攣の長さが次第に伸びているのを感じた。気のせいではない。

免疫の低下。

原因は此れだ。身体を酷使する度に、ネジが弛む様な、精神的にも身体的にも不整合、歪みが生じる。


薬は、そのネジを締め直すドライバーであり、決して手放せない代物である。






「―――…何故?」

疑問。

何故修理を欲すのだろう。
修理と言えど、所詮は薬だ。その内効かなくなる。歪みは日々大きくなっている。やがて、動かすだけで全てのネジが吹き飛び、死ぬだろう。


死ぬのが怖いか―――――否。


生きていたいか―――――否。


すべき事柄が在るか―――否。





…ならば何故生にすがる?



………………
………………
………………

否。
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