ｺﾞｰｽﾄｵﾌﾞｱｲﾃﾞﾝﾃｨﾃｨｰ

否。違う。

今幸福は「生」という化物に束縛されている。

生は、やがて未練に変わる。欲せずとも、何処からともなく沸き上がる、欲。

望みでなく、本能的にくる欲である。その衝動、幸福は簡単に抑えられる。ただ自制すれば良いだけの事。

しかし幸福はそれをあえて抑えつけたりはなかった。


鬱陶しかった。面倒だった。気だるかった。苛ついた。しかし…放った。



幸福は観たかったのだ。己が何を欲しているのかを。どれだけ負に犯されても、一度観てみたかったのだ。

幸福は世界の全てを知っている。故に、己が本能、本心から欲するモノを、未だに知らずにいる。

全てを知ってして、その中でも幸福自身が最も欲するのは何か―――――――