Strawberry & Chocolate
…けど、そう言われちまうのも無理はない。
実際、俺はリナに自分の想いを伝えようとしてないんだから。
俺たちはずっと家族同然で育ってきた。
9年前のあの日からずっと。
多分、リナは俺のことを〝家族〟としてしか見てないんだろう。
昨日だってバスタオル一丁で玄関まで出迎えてるし。
年頃の女の子が、バスタオル一丁って…っ!
フツーの男子なら押し倒してる。
俺だってヤバかったし。
それとも…こんな気持ちになる俺がいけないのか?
家族として育って、いつの間にか、自分では気がつかないうちにリナを女として見てた。
リナの全てが欲しいと思うようになってた。
ホント…俺、どうかしてる…。
今の関係を保つ為にも俺の気持ちは封印しておいた方がいいんだ。
その方がリナにとっても―…。
「おい、そこの。悩めるへたれ少年くん」
「へたれてねーよ!」
「良いのか早く帰らなくて。夕飯なくなるんではないかの?」
ぎゃわっ!!
もうこんな時間かよ!!
つか、引き止めたのは師匠じゃねーか!!
「んじゃ、師匠!!サヨナラ!ありがとうございましたー!!」
俺はカバンをひっつかんで、慌てて道場を後にした。
…だから、その後ろで師匠が呟いていた言葉を聞くことはなかった。