Strawberry & Chocolate
┣No.36.3 愁いの魔女と守護騎士~月島side
驚いた。
というか、驚いたというレベルじゃない。
自分の目を疑った。
中村さんと柳人くんに連れられてやってきた綾小路さんのお屋敷。
そこにいた、その人の姿に。
その存在に。
〝大魔女〟――。
今やヴァイズじゃ伝説にすらなっている魔女がそこにいたからだ。
しかも綾小路さんの母親として。
有り得ないを通り越して…なんて言えばいいかわからない。
困惑しまくりで落ち着くに落ち着いていられなかった。
中村さんには「センセー、テンパりすぎー」とからかわれてしまったが…。
それほど動揺していた。
聞きたいことが山ほどありすぎて。
言いたいことが山ほどありすぎて。
とりあえず俺は気持ちを落ち着かせ、夕食の後、広い綾小路家の中庭に〝大魔女〟を誘い出した。
「……今夜は三日月ね」
そう呟き空を仰ぐ姿は…とても神秘的で、美しかった。
そんな姿を見て俺は、正直に話そうかどうか迷ったが、単刀直入に聞くことにした。
てか、この人の前でごまかしながら話すなんて高度なマネできなそうだしな。
「〝大魔女〟、色々聞きたいことがあるのですが、まず最初にお願いを申し上げてよろしいでしょうか?」
「何かしら?」
「ヴァイズ国に…東方王族·望月(モチヅキ)家に、戻ってきて下さい」
それは、俺の…切なる願いだった。
これ以上もう、あの子の辛い姿を見たくはないから。
けれど〝大魔女〟は何も答えない。
「ご存知のハズでしょう!?あなたならっ!
望月家が…東方王族がどんくらいの危機にあるかなんて!
今、望月家を支えているのは…まだ14歳の少女…あの子だけなんです!!あなたが戻ってくるだけでもあの子の苦労や心労は半減するんです!!あなたが戻ってくるだけで東方区域は救われるんです!!」
しびれを切らした俺は今まで溜めてた想いを一気に吐き出した。