Strawberry & Chocolate
「素が出てるわよ、松希(ショウキ)」
「…ゴホン、ゴホンッ。
…先生、冗談でもそんなことを言うのはどうかと」
いやいやいや!!
もうそんなごまかししなくていいって!!
てか、柳人くんの前じゃ常に素だった気がするし。
今更そんな穏やかキャラにしなくても。
「緑」
「は、はいっ!?」
「あなたのことも、今の東方王族の現状も。確かに、私のせいでもあるわ。あの子…マリィにも…とても辛い想いをさせてしまっている」
「…全部…お見通しってわけですか。だったら…なんで…っ!?」
「私はヴァイズには戻れない。できないの」
「できない…!?どういう意味ですか!?」
「〝刻〟は動き、すべての歯車が噛み合いだした。
…緑。どうかあの子たちから目を逸らさないで。支えてあげて…」
「綾小路さんたちのことですか?」
「そう。全てはあの子たち次第だから」
「意味がよくわからないんですが…。あの子らは今までの子たちよりも充分強くてたくましいですよ。
それに何て言ったって綾小路さんはあなたの御子でしょう?支えなんて…」
あの〝大魔女〟の血を引く者。
マリィもそうだが、綾小路さんは〝大魔女〟の実の娘。
今は何の力も感じないけれど…その身にはきっと中村さんのような大きい力を宿しているに違いないハズ。
そんな彼女らを支える必要なんて…。
「そう。小梅は私が産んだ子。だからこそ、その存在は揺らぎやすくてとても危うい」
「危うい…!?綾小路さんが…?」
「…全てが動き出した今、この〝世界〟自体が揺らいできている。イーヴルが存在するこの世界が」
〝大魔女〟の言葉全てが、俺には理解できなかった。
けれど〝大魔女〟は、真っ直ぐ全てを見通すようなその深紅の瞳で俺を見つめながら言った。