Strawberry & Chocolate
┗No.39.9 準備~???side
「やーっと思い出し始めたみたいだなー。あんたの〝身代わり〟は」
俺の後ろでそんな陽気な声が聞こえた。
長身で細身の男性がソファーに座りながら自身の武器である短剣の手入れをしていた。
「んだよキリト様、シカトかよ。もうちょい喜んでもいいんじゃねーの?」
「うるさい。…それより準備はできたのか?」
「あ?あんな雑魚ども相手に準備もなんもねーだろ」
「余裕ぶってたら足元すくわれるぞ」
「はっ!やれるもんならやってみろって。つーか俺じゃなくてカヤやミーアでも相手になんだろーがよ。手加減すんのも楽じゃねえんだぜ~?」
…確かに、今のレベルでは、カヤやミーアでも余裕で〝Hope Lights〟の使い手を抹殺できるだろう。
だが、それでは意味がない。
抹殺が目的ではないからだ。
「…これはウィルが決めたことだ。俺たちに口出しできることじゃない。
ツルギ、準備が出来たならカメリアを呼んで来い。出るぞ」
「へいへい。わかりやした」
けだるそうに返事をしながらツルギは部屋を後にした。
全ては、ウィルが決めたこと。
俺も、アイツらも、ウィルには逆らえない。
いや、アイツらは俺にすら逆らえないのだ。
〝彼ら〟は、本来〝存在しないモノ〟。
昔、ウィルに言われたことだ。
ヤツらに心を傾けるなと。
「あと少しで…全てが終わる。全てが元に戻る――」
そのことだけを夢見て。
俺は〝剣〟を握る。