Strawberry & Chocolate
「ご、ごめんなさい月島先生。あたし、マリィちゃんのこと怒らせちゃったみたい…。何かカンに障ること言っちゃったのかな…」
「気にすることないよ。悪いのはこのヴァイズの仕組みなんだから…」
「仕組み?」
「ヴァイズの人間は王家が与える仕事をして報酬を得ているんだ。
その王家は長老院から任務をいくつか与えられる。
その任務を王家の人間を筆頭に国民全員でこなすんだ。任務を完了したら長老院から王家に報酬がきて国民に配られる。
そんなシステムなんだ」
「つまり、この東方区域が不景気なのは、任務の先に立つ王家の人間がマリィちゃんしかいないから?
だから任務ができないってこと?」
「王家の人間がいないなら王家に仕える家が筆頭に立てばいいのだけど…。
問題は任務の数なんだ。
長老院から一度に与えられる任務の数は3つまで。任務全てを完了させないと次の任務は貰えない。この東方区域は何十年も前から任務完了の報告が出来ていないんだ」
「なるほど…。だから次の任務がもらえない、イコール仕事がないってことなんだね」
国民は何十年も前から仕事についてるけど、まだ任務が完了してないから報酬がもらえないってことか。
そりゃあ荒れもするわ。
仕事してるのに報酬貰えないなんて。
ストライキもんだよ。
「それならまだいいんだけどね。任務を受けた王家の人間が国民に仕事を与えず一人で任務に出たんだよ。そしてそのまま行方知れず。
国民は仕事が貰えず、とりあえずは食物や魔具なんかを売って生計はたててるものの…その日暮らしみたいなもんさ。
当然、国民の怒りは王家に向く。
それがこの有り様…―」
そう語っている月島先生は、今にも泣きそうな…そんな悲しい表情を浮かべていた。