Strawberry & Chocolate
No.10 お気に入り~柳人side
立ち入り禁止の扉。
昼休みもそろそろ終わる。
生徒たちも自分のクラスへと戻っていき、人気がなくなるのを確認して俺は、ポケットからヘアピンを取り出した。
つくづく今の教師は生徒を甘く見すぎている。
こんくらいの鍵なんざ1分もかかんねえで開けられるっつーの。
いつものようにヘアピンを伸ばし鍵穴に差し込んだ。
…けど、すでに鍵は開いていた。
誰だ…?
…屋上に来るやつなんて…。
…………………いるな。
俺はそっと屋上の扉を開けた。
いつものように少し強い風が吹いている。
その風が歌声を運んできた。
ここでしか聴けない歌。
…めずらしいな。
あいつが昼休みから来るなんて。
「また何かあったのか?小梅」
長い菫色の髪をなびかせながら小梅は俺のほうを振り向いた。
「柳人っ!?いつからそこに?」
「今。つか、教室戻んなくていいのか?5限目始まるぞ」
「あぁ、いいんです。私、次の時間は頭が痛くなるって言う予定ですから」
そう言って悪戯に笑った。
どんな予定だよそれ…。