Strawberry & Chocolate
小梅と教室で別れてあたしは生徒玄関へとむかう。
途中ちょろっと1組の教室を覗いたけれどソラはすでにいなかった。
相変わらず部活行くの早いなぁ。
夕飯何がいいか聞こうと思ったのに。
「あれ?中村さん、ルゥを連れてどこ行くんですか?」
そう階段から下りて話しかけてきたのは、あたしたちのクラス担任·月島先生だった。
新任のくせに小梅のサボりを見破るなんて…なかなか侮れない。
「えへへー。今日だけちょっことルゥ借りていきますねー。月島センセっ!」
「どうぞどうぞ。みんなで育てているんですから。ご自由に」
…なんか笑顔が冷たく感じるのは気のせい…よね?
てゆーかそれより…何?
さっきからジロジロジロジロ人のこと見て…。
顔近いし。
キモいんですけどっ。
「何ですかセンセイ。…言っときますけど制服なら」
「…うーん。どうしても思い出せないんだが…。
…俺、昔中村さんのこと…どっかで見たことあるような気がするんだよね…」
「…え……?」
「でも…。うーん……。やっぱり気のせいか…。ごめんな呼び止めて」
「……どこで…」
「ん?」
「どこであたしを見たんですか?何年前?」
「あーゴメン。ホント気がするってだけで…。何か気になることでもあるのかい?」
だって、あたしは。
今、あたしがここにいて、中村園にいるのは。
「…いえ別に。…サヨナラ」
あたしは早足でその場を後にした。
はぁ…。
月島先生の言う通り、あたしなんでそんな気にかけてるんだろう。
…バカみたい。
昔は昔。
今は今。
あたしは〝中村 リナ〟なんだから。