女子高生と魔法のランプ




「で、俺は瓜の家の近所に昔いた幼なじみで。家の事情で海外の方に行っていたような感じだったらしい、と……すっげぇぼやけ方」

「や、それほどでも」

「誉めちゃいねーからな」


わかっている。


まぁ、面白ぇけど。とご機嫌に笑うランと並んで校舎を巡る。

一階、二階と順当に案内を続け、現在は三階に差し掛かっていた。

とりあえず、瓜は疲れてきていた。
普段あんな人の渦の中にいることもなければ、大勢の人間と一度に話をすることもなく、1日の中で校内中を巡るような事もまた瓜の今までの日常にはまずなかった出来事なのだ。

既に平時の彼女にとっては立派なオーバーワークである。



と言っても表向きは分かり難い。
普段から親しい友人ぐらいとしか話をしない瓜の口数が少ない事はよくある事。

だがランはその微妙な機微に気付いたようだった。
もう果てしない時間を、その都度違う主人に仕える為に使ってきただけあって、感覚が研ぎ澄まされている。


「なんだよ」

「え、」

簡潔過ぎて意味がわからない。
何のこっちゃと瓜はランに目をやる。

「どした?静か過ぎ」


自分は決して騒ぐタイプではないと思うが、少しゆるゆると頭を働かせた結果、見当がついた。


「…やーあの、この半日が目まぐるしくてちょっと息切れ」

「こんくらいで?」

「当社比」



ふーんと珍しそうに瓜を見下ろし、何でもないように彼は口を開く。


「疲れないようにしてやろうか?」
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