女子高生と魔法のランプ
でももヘチマもない
波乱万丈(瓜内当社非)なランの高校デビューを終えた放課後。
(まぁやっぱ。そうですよねぇ)
と、
瓜は鼻歌を歌いながら隣を歩くランをちらりと盗み見る。
2人そろっての帰宅。
ランの長年の住まいだった例のランプは現在瓜の家にあったのだから、まぁ普通に考えればランの帰る方向、と言うか場所は当然瓜の家だろう。
ランは初めての高校生活が気に入ったらしい。
先からご機嫌だ。
「つか、最近の若い奴らもやっぱあんくらい元気なんだな」
急に何気なくこぼしたランの言葉にやや首を傾げると、ランがあっけらかんと言葉を続ける。
「や、現代で一番最初に俺が見た若者って瓜だったからさ。随分と無気力になったもんだなーとか思ってたらやっぱそーでもねーんだなと」
「あぁ、さいで」
「あとこういう事言われてまったく気にしねぇのも今時アタリマエってノリでもねーみてーだし」
ランプの精としての膨大なキャリアは無駄じゃないと言う事か。
生徒達に取り囲まれながらはしゃぐ中にも時折よぎった冷静な視線が汲み取ったのは瓜がなんとなく思っていたよりはるかに分析的なもののようだ。
「まぁ、少数派では、あるのかなぁ…」
「ぶはっなんっかこう瓜って…動物みたいだよな」
「あー」
「なんつかこう、日向ぼっこしてる犬みてぇ」
それはなんとなく、
「よく言われるような」
「縁側の猫」だとか「動物園の草食動物」だとか。
「うん。なんかいーな。お前みたいなの」
「きょーえつしごく」
「思ってねーだろ」
「まぁまぁ」
「ははは、うん。人がこんな風に生きられる世界になってんだなぁ。今は」
しみじみと呟いたその静かな優しい声音に、一瞬声が詰まる。
上辺のノリでいたからか、その声があまりに深かったからか。
なんとなく脈が速まったように感じて、なんだか彼の顔が見られなかった。
きっと彼は今、とてつもなく優しく、そして遠い顔をしているだろうから。
彼に気付かれないようにそっと、意識して多めに息を吸って、少し吐いた。
「………御隠居な台詞ですなぁー」
「うっせ」
そう言ってやっとランを見れば、無邪気な子供のように歯を見せて笑っていて、内心で安堵した。