女子高生と魔法のランプ
「…………あ」
「うん?」
樺山家に到着し、玄関を見た瓜が小さく声を零し、ランがそれに気付き目線の先の靴に目をやる。
「いーにぃが帰って来てる」
「いーにぃ?」
短く返した瓜の声が、ばたばたと家の奥から聞こえて来た足音にかき消される。
「う~り~!!!!!!」
そんな不自然に高い声と共に抱きつかれ、そのまま持ち上げられ、ぐいぐい頬ずりされながらぐるんぐるん回転される。
毎度のことなので、瓜はここでとくにリアクションはしない。
そして優しく元立っていた場所に下ろされ、正面から微笑まれる。
瓜のもじゃもじゃ髪とは違う、毛先に緩くつけられたパーマのある黒髪と、左目下の泣き黒子。
ランと同じかもう少し高い背。
「んも~元気だったぁ?」
妹目に見てもきっとこの人はイケメンという人種の容姿だろうと思うような外見とその口から出て来るオネェ口調。
「うん。帰ってたんだねぇ」
「そうなのよぉ~なんだか猛烈に癒しが欲しくなっちゃって勝手にお休みにしちゃったぁ~っ」
きゃっきゃとまるで女性の如くはしゃぐ様子をやや珍しそうに見ているランに視線を移す。
「兄の樺山 糸」
先ほどかき消された言葉をもう一度繰り返すと、「ああ、男だよなやっぱ」と納得顔で返してきた。
紹介された糸が今度はランに向き直り上から下まで探るように見る。
「アンタが昨日からいるって言うランプの精~?」
「いたのはもっと前からだけどまぁ、そーだな」
「ふぅん?」と片眉あげつつ意味ありげに笑う。
こうして笑う顔も単純に綺麗だよなぁと思う反面、えぇとこの兄は別に口調だけで趣向は普通だったよなといらん懸念がよぎる。
「まぁ制服だからなんともってトコはあるけど、とりあえずはゴーカクかしらね」
糸の言葉にランが何が、と言う風に眉をひそめる。
服の着こなしのことだろう。
糸の本職は服飾デザイナーなのだ。