女子高生と魔法のランプ
食事を終え、居間でくつろぐ前に制服を着替えなさいと母に言われた瓜が自室に行くと、魔人がいた。
ドアの音で瓜が来た事に気付いたらしく振り返る。

蛍光灯の光の下に立つその姿はあからさまに時代錯誤と言うか国際的過ぎるというか、とにかくコスプレかなにかに見える。


「ここ、お前の部屋か」

「あ、はい。
着替えたいんでご用なら回れ右してからか部屋の外で終わるまで待っててもらえますか?」

「え?」

「回れ右」

あまりに普通に言われ魔人もつい指示に従う。
瓜が制服を脱ぎ始めるとすぐに背を向けたままツッコミを入れてきた。


「女としての恥じらいとかねぇのかよ!」

「…一応あったからそっち向いてて貰ってるんですけど」

「いやだから!…あーもーいい!」


後ろから見るとその浅黒い肌でもわかるほど耳と首が赤い。
精神の若い人だなぁ…と思いつつ部屋着に腕を通した。


「で、なんかご用ですか?」

「あ、おう。
お前、なんで俺をランプから出したんだ?」

「う?」

「ランプから出して、自分の願いも叶えずに俺を解放した理由がわからねぇ」


理由なんて、なかった。
そう答えた。


「あ、もう着替え終わりましたよー」

白黒のボーダーの部屋着に着替え終え、制服の埃を取る瓜に魔人は向き直る。


「ないってお前…」

「ランプは偶然見つけまして、汚れが酷かったので擦ってただけだったんですよ」

「偶然だったとしたって、なんでも叶うんだぜ?
大金持ちにだってなれるし、名誉だって」

思ったよりも埃が多く付いていたので、手で取る事をあきらめブラシを手に取る。

「会ったばっかりの魔人サンに言って叶えて欲しい程固執した願いって今の所なかったので、それなら願いがある人に譲った方が無駄がないかなぁって」


魔人は珍獣を見る目で瓜を見たまま固まった。
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