お箸付けますか?
「…手。」
消え入りそうなくらいの小さい声が、痛みの度合いを物語る。
「手が痛いのか?どっちの手だ?右か左か?」
「…手…右手…。」
右手と言われ、店長と俺の視線がおのずとメガネ君の右手へと移る。
……。
ん?
視線の先には俺の足があった。
俺、踏んでる?
どうやら右手を踏んでたらしい…なんて存在感の無い奴だ…まったく気づかなかった。
「…他に痛いとこは無いのか?」
店長の視線も気になり、バツの悪くなった俺はそう言いながらそ〜っと足を上げた。
足を手から離すと、靴跡がしっかり入り赤くなった手が顔を出した。
「……大丈夫です。」
そう言って、ゆっくりと立ち上がったメガネ君の顔は明らかに俺を睨み、ムスッとしていた……。