お箸付けますか?
「先輩!これは奇跡ですよ!」
勢いよく振り返り、俺の顔面いっぱいに唾を振り撒くメガネ君。
「…落ち着け。」
ハンカチーフで顔を拭きつつ、あたふたする奴を諭す。
「先輩!これが落ち着いてられますか?…会話しちゃったよついに…奇跡や。小さな奇跡や〜!」
……。
おにぎりをレンジにインしたり、自動ドアに挟まったりと大きな奇跡を魅せてきた奴らしからぬ発言だ。
なかなか落ち着きを取り戻せないでいるメガネ君を他所に、腹の減った俺と拓海は一足先に会社に戻ることにした。
俺達の背後からは会社に入るまで、メガネ君の雄叫びが 降り注いでいた。