仮面王子
それから、涼くんは仕事があるから‥と、帰っていった。
そして、うちには珍しく蕾斗がいる‥‥
今部屋に響くのは
“トントン”
という包丁で切る音とシャワーの音。
蕾斗はお風呂に入ってて、只今夜ご飯の支度中。
蕾斗が家にいるのは久しぶりで、なんだか変な感じがする。
「姫子」
ビクッ──
「晩飯なに?」
「あ、えっとポテサラとカレー」
私が振り向くと、蕾斗は上半身裸で私の真後ろに立っていた。
なんだか恥ずかしくて直視出来ずにいると、そんな私には気にも止めず、何故か蕾斗はカレーを温めていた火を消して私に近づいてきた。
「‥えっと‥‥蕾斗??
ってか、上、着ない?」
なになに?
なにが、起こるの?
蕾斗が一歩近づいてくるたびに一歩後ずさる私。
「ん?晩飯でもいただこうかなって」
‥‥‥‥は‥い?
お風呂上がりの蕾斗の髪からは、筋肉質で引き締まった体に髪の先から水がすたすた垂れていて、色っぽい。
‥‥‥そして、ドキドキする。
「晩飯って‥なに?」
苦笑する私の頭に浮かんだ悪い予感‥‥
そしてとうとう壁際まで追い詰められてしまった。
ちゅっ──
「んっ‥‥」
───悪い予感
「んんっ‥ちょっ‥‥らい‥とっ」
───的中