仮面王子
私たちが中に入ると、確かに記者会見は始まってて、前の椅子に蕾斗と石川さんと事務所の社長らしき人が座っていた。
『えー‥今回の報道については高梨さんから訂正があります』
ザワッ──
高梨さんの登場に会場はざわめいた。
熱愛報道に関しての記者会見?
『高梨さん、どうぞ』
笑顔で託す蕾斗だけど‥
笑顔と一緒に黒いオーラが出てるし‥
「ククッ‥蕾斗、相当キレてんね〜」
そんな蕾斗を見て楽しそうに話す涼くん。
やっぱ涼くんには伝わるんだね。
ってかね。
さっきから気になってたんですけど‥
「涼くん‥手」
そう。
さっきから涼くんはずっと私の手を握っている。
さすがに気になって言ってみたけど‥
その試みは笑顔によってかき消された。
けど、涼くんは何故かさっきから生き生きしてるんだよね〜‥
なんでだろ?
『あの‥』
高梨さんが話し始めた。
その声にこの会場にいる全員が釘付けになった。
心なしか高梨さんの声は震えていた気がした。
『あの、熱愛報道は私のでっち上げです』
ザワッ──
報道陣から再びざわめきが起こる。
ってか、でっち上げ?!
じゃあ、あれのせいでケンカした私たちって‥何??
「それはどういう事ですか?!」
なかなか続きを話さない高梨さんにキレを切らしたのか、報道陣からそんな声が響いた。
『それは‥あの‥』
今日の高梨さんは芸能人というオーラを感じなくて‥
なんというか‥
失恋した普通の女の子みたいだった。