仮面王子
身支度を済ませたであろう蕾斗はリビングに入ると不機嫌そうに冷蔵庫の中から水を出し一口飲んだ。
そんな様子を洗濯物を干しながら見ているとやっぱり目が合った。
「なに、さっきの」
「なにが?」
きっと、さっき私が逃げた事を言ってるんだろうけど敢えて聞き返す私。
なんて性格の悪い女なんだろう‥
なんて自己嫌悪に陥ってみたり。
「もういい‥」
あらら‥
ますますご機嫌ななめ。
なんか最近、こんなのばっかりだ。
「今日、和食じゃん?」
うちはカウンターキッチンになってて、そのカウンターキッチンの椅子に腰かけた蕾斗。
洗濯物を干し終えた私は洗い物をするために蕾斗の目の前の流し台に‥
「無視?」
「あ、えっと‥
ちょっと早く目が覚めたから頑張ってみました」
自然と笑顔がぎこちないものになる。
「あ、そ‥‥‥
てか、昨日さ‥」
ピリリリリ ピリリリリ♪
蕾斗の言葉を遮り突如鳴り出す携帯。
タイミング悪すぎだろ‥
私は携帯を無視して洗い物をしていたんだけど‥
「見ねーの?」
「‥‥‥うん。見ない」
「ふーん‥」
「なに?」
「なにが?」
「さっき言いかけたの‥」
「別に‥」
言い終わると同時に立ち上がった蕾斗は、食器を流しに置いてジャケットを羽織ると玄関に向かった。