仮面王子
苺は、「はぁーッ」と大袈裟に溜め息を着くと観念したような表情でパソコンの前から退いた。
私はゴクンと息をのみ、覚悟を決めてサイトを見た。
そのサイトは蕾斗‥いや、Raitoのファンによる掲示板みたいなものだった。
そこには私の愚痴はもちろん、私のメアドもケー番も全て載ってた。
─Raitoの彼女、たいして可愛くなくない?
─てゅか、むしろブスだろ
─あんなのにRaitoを盗られたくない
とまぁ、こんな悪口がたくさん載っていた。
中でも私が思わず目を止めてしまったのは
─Raitoはみんなのモノだ。抜け駆けなんて許せない!別れろ!
この文、携帯にも送られて来てた‥
ていうか、蕾斗はモノじゃないのに‥
何か勘違いしてるよ‥
「あ、この文のハンドルネーム“裕子さん”て知ってるよ」
私がその文で目を止めていたのが気になったのか、苺もパソコンを覗きこんできた。
「嘘っ?!
ほんとに??」
「ほんとほんとー‥この人すっごい熱狂的なファンでさ、ファンの間では有名なんだよね‥」
「そうなんだ‥」
「姫、ホントに襲われないように気を付けてね?」
苺のその言葉に少しゾッとした。
「よし!
じゃあ、仙石屋に行きますかぁ♪」
「お財布が痛いんだけどね〜」
「知りませーんっ♪」
ネカフェを出ると私たちは、駅前にあるスイーツの高級店、仙石屋に向かった。