仮面王子

家に着いてとりあえず応急処置をして自分の部屋にいた。


とてもじゃないけどご飯を作る気分になんて、なれなかった。



ガチャ──



玄関の扉が開く音‥


自然と体を身構えてしまう。



「姫子?
いないのか?」



蕾斗だ。


蕾斗には心配かけられないよ‥


いつも通りにしなきゃ‥



自室から出ると私はリビングに入った。



「おかえり」


「おう」


「ごめん、まだご飯の準備出来てなくって‥」



私の言葉を聞くと蕾斗は眉をひそめた。



「なに?なんかあった?」



蕾斗には心配かけちゃだめ。

これを言ったらきっと蕾斗は自分を犠牲にしてでも私を守ろうとするよ?


何度も心の中でこの言葉を繰り返して自分自身に言い聞かせた。



「なにもないよ?
ただ、疲れてただけ‥」


「ふーん‥
じゃ、久々食べ行くか?」



ホントはあんまり食欲ないんだけど‥



「うん、ありがと‥」


「ちょ、着替えてくるわ。
あ、ポストに手紙入ってたぞ。テーブルの上に置いてあるから」



言い終えると蕾斗は自室へ入っていった。


私が帰ってきた時には手紙なんて入ってなかったのに‥



「っ‥‥」



気付いた頃には時すでに遅し。


私の指はぱっかり切れていた。


そして、カミソリ付きの封筒の中には死ねと言うメッセージが書いてあるメモ用紙。


定番だな‥

なんて流れる血を見ながら頭の中で冷静に判断してた。




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