死のメール
第一章『鷹野家』

①彼女、俺、そして娘の過去

 俺は鷹野 慶斗。都会の小さなアパートで一人娘と暮らしている。
二年前に高校を中退し、娘の『慶嘉』を育てる為に育児に専念する事となった。

 慶嘉には母が、そして俺には妻が居なかった。
何故なら慶嘉の母で俺の妻の高畑 友嘉は高校一年生の秋に自殺してしまったか
らだ。
だから俺は、友嘉の形見であり、俺の宝物でもある慶嘉を男手一つで育てる事に
したのだった。

 そう、時を遡れば五年前…中学一年生になり二ヶ月程学校に通ってから突然、
友嘉が意外な事を口にして来たのだ。

『慶ちゃん…私…子供が欲しい。女の子が欲しいの。』
『…へっ!?何言ってんの友嘉…本気?』
『本気だよ。私、慶ちゃんの子どもが欲しい。お願い、生ませて…』

 初めは冗談で言っているのかと思い軽く流していたが、友嘉の真剣さに釣ら
れ、友嘉の中に新しい命を作ってしまう事となってしまった。
もしもこの事が周りにばれたら大騒ぎになると思っていたが生憎友嘉にも俺にも
両親は居ないため、大騒ぎにはならなかった。
仮に学校関係者にばれたとしても友嘉は構わないと言っていた。
ただし、このお腹に居る赤ちゃんだけは生むと強い決心を固めていたのだった。

 この時友嘉が何故子供を生みたいのか分からなかったが、後でその理由がよく
わかった。

 実は友嘉の家族は代々超能力を受け継いでいて、不思議な力を持っていた。
その力で沢山の人々を助けてきた友嘉だったが、その力を馬鹿にする人間も居た
のだった。
それが友嘉を虐めていた生徒達だ。

 だが、友嘉は虐められても、決して超能力の力を使い人を傷つけることはな
かった。

 何故そんな優しい心を持った友嘉が虐められ、挙句の果てに殺されなければな
らなかったのだろう。
俺は友嘉を守れなかった悔しさと、友嘉を殺した奴等への憎しみで頭の中がいっ
ぱいだった。

 でも、もう直ぐ友嘉を殺した奴等への復讐が始まってしまう。

 大好きだった母を殺された慶嘉の怒りは、相手を殺すまで収まらないのだか
ら…。
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