死のメール
　しばらくしてから女子の一人が俺の机に紙のようなものをおき、全員を連れ
て教室を出ていった。

　そして俺はあることを思い出した。
友嘉が死ぬ少し前に教室に戻ってくると自分の机の上には白い紙がおいてあっ
たのだ。
その手紙の内容は、みるからに遺書だったということを…。
俺は友嘉を助けようと無我夢中で屋上に走っていった。

　息を切らしながら屋上に着くと辺りをきょろきょろと見回している友嘉の姿
があった。

『…慶ちゃん…居ないなぁ。まだ来てないのかな？』

友嘉に触れられない事は分かっているがなんとかしてやりたいという気持ちが
俺を動かし、俺は我を忘れて友嘉のところへ走っていっていた。

「友嘉！これは罠なんだよ！気付いてくれよ！頼むよ！友嘉！友っ…」

　俺は…ただ茫然と目を見開いていた。
それしか出来なかった。
友嘉は数人の女子に物凄い力で後ろから押され、フェンスを乗り越えるとその
まま落下し、固い地面の上に叩きつけられた。

「…あ…あぁ…うっ、うわああああ！！」

　俺はフェンスを掴んで大声で叫んだ。
自分の近くでは女子達の歓声が、校舎や校庭からは悲鳴が聞こえてきた。

　屋上から落ち、体中が血だらけになった友嘉の周りには沢山の野次馬が集
まってきていた。

　俺は何もかも聞こえないように耳を塞いだ。
何もかも見えないように目を伏せた。
これ以上友嘉の過去を見ないように。聞かないようにと。
この先どうなるかは自分が一番知っているからだ。
だが目を開けると俺が居たのは屋上ではなく、
友嘉の倒れている目の前だった。
慶嘉が現実を受けとめるようにと、この場所に俺を移したのだろうか？
確かに現実を受けとめなければこれからどうしたら良いのかも分からなくなって
しまう。

そこで俺は野次馬の間を通り抜け、倒れている友嘉の許へと向かった。

「友嘉っ…」
『友嘉！！』
「…ん？」

俺の他にも友嘉を心配してくれる人が居た。
そう思って隣を見るとそこに居たのは二年前の俺だった。
そういえばこの時血だらけになった友嘉を一番最初に抱き抱えたのは俺だった
と、後で思い出した。
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表紙・目次

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